この記事では『王者の盤狂わせ』第3巻を読んだ感想を書いていきます。
物語の重要な部分に深く触れた内容となっていますので、まだ読んでいない人はお気を付けください。
・『王者の盤狂わせ』どんな作品?
| 著者 | 依依恋恋 |
| イラスト | ふじ子 |
| 種類 | 文庫本 |
| レーベル | GCN文庫 |
| 既刊 | 3巻 |
| 新刊発売予定日 | 2026年11月22日頃 |
『王者の盤狂わせ』はラノベニュースオンラインアワード3月・4月連続4冠達成。
アニメ化してほしいライトノベル・小説2026年上半期・第6位。
など今、非常に注目されているライトノベルです。
・登場キャラ
・渡辺真才(わたなべ みかど)
主人公【自滅帝】こと渡辺真才。将棋アプリ将棋戦争のトップをひた走り、アマチュア9段。
今や注目の的となっている。
・東城美香(とうじょう みか)
真才と西ヶ崎高校に通い、同じ将棋部の生徒。将棋に対して真っすぐ。
・来崎夏(らいざき なつ)
ネット将棋に深くハマっている。将棋に対する情熱が強い。
西ヶ崎高校将棋部に所属。自滅帝に強い思い入れがある。
・葵玲奈(あおい れな)
西ヶ崎高校将棋部のメンバーの一人。明るく親しみやすい性格で、個性的な将棋部の中でも場を和ませる存在だが…
・武林勉(たけばやし つとむ)
西ヶ崎高校将棋部の部長。豪快で熱い男だが冷静な判断もできる頼りになる部長。
・佐久間兄弟
将棋部に所属する兄弟。2人とも個性的。
最初は真才に対しては思うところもあったようだが徐々に打ち解けている。
・2巻までのストーリー
全国大会【黄龍戦】県大会まで勝ち進んだ西ヶ崎高校将棋部は遊馬環多流、擁する東地区代表と対戦。
対戦するまでに真才に対して様々な嫌がらせをする遊馬環多流でしたが、真才にあっけなく負け、西ヶ崎高校も無事一回戦を突破。
遊馬環多流の嫌がらせにより、真才は不正を疑われ大会の出場も危ぶまれましたが、SNSアカウントを自滅帝の名で作成し、県大会の行われる会場の写真をアップし疑惑を晴らします。
この行為により、今までひた隠しにしていた自滅帝=渡辺真才の事実が世間にも知られることに…
そして、南地区との準決勝が開始。
・3巻の流れ
3巻の大まかな流れ
西地区・西ヶ崎高校将棋部vs東地区・天王寺道場
準決勝は西地区・西ヶ崎高校将棋部vs東地区・天王寺道場。
ここでは2組の対戦がクローズアップされていました。
まずは、葵玲奈vs柚木凪咲
元天王寺道場所属と現天王寺道場所属の対戦。
前半から葵の作戦を読み切った凪咲が優勢に進め、葵の持ち時間的も無くなり一方的な展開に。
しかし、絶望的な状況になりながらも思い出す。
これまで葵は序盤こそ自由奔放に指していましたが、中盤以降は至って普通の棋風。
中盤以降で大局観という自分の強みを出すことを躊躇っていましたが、真才に指摘されたことを思い出し、絶体絶命の場面で殻を破り勝利をつかみ取ります。
渡辺真才vs天王寺魁人
大将戦は魁人が真才の耀龍楼閣を警戒し、それをさせないよう様々な対策をしており主導権を握ります。
終盤に差し掛かり真才が長考。長考後の一手は玉頭戦を諦めるだけでなく取れる駒を取らずにただ受けに回る一手。入玉受けをしていた魁人は混乱。
終盤にきて、またも盤上は序盤戦のような形になります。
真才として自分の形に持っていけないのであれば、防がれない形を作り上げればいいという考えで指した一手。
魁人は真才のどんな状況でも”読み”を諦めない姿に感化され終盤は時間が無くても諦めず深い読みを披露。
逃げる真才の玉を最後まで追い続けますが届かずという結果になりました。
魁人はどこか父親である天王寺玄水の将棋のスタイルや考えを否定し最善手の将棋ばかり考えていましたが、原点である将棋が好き、「将棋を好きな者が何故読みを切り上げる?」という玄水の言葉を思い出し、苦しい場面でも最後の最後まで読みを続け、一皮むけたような印象を受けました。
西地区・西ヶ崎高校将棋部vs中央地区・凱旋道場
決勝の組み合わせは西ヶ崎高校vs凱旋道場。
いきなり、大将対決の渡辺真才vs青薔薇赤利が描かれました。
静かな立ち上がり。
しかし、真才は何かいやな予感が…
その予感は的中しており、赤利はそもそも攻める気はなし。
真才の戦いは膨大な思考力を費やしていて、相手が攻めてきたところをすり抜けるように玉を進ませると理解している赤利は攻めを捨て完璧な受けで対応。
無理矢理、真才が攻めようものならカウンターが待っているため、攻めることができず千日手四回で指し直し。
これが繰り返され、お互いに体力が消耗しますが、高い棋力で互角の攻防が繰り広げられます。
中盤を過ぎ、真才は天王寺魁人戦と同様、残り時間を全てを使う大長考。
詰ます局面まで読み切ります。
赤利が指した後、即座に指し返す真才を見て、最後まで読み終えていることを理解。途端に自分が負けてしまうことを悟り、恐怖で手を震わせます。
しかし、流石は凱旋道場のエース。
プライドをかなぐり捨てて悪手上等で勝ちを掴み取りにいきます。
一進一退のまま最終盤、真才は駒台から飛車を手に持ち、盤上へと置きますが、会場の全員が「あっ…」という反応。
直後、赤利は角を打ち、これが王手飛車。
誰もが疲労からのミスかと感じていましたが、これはミスではなく、相入玉を狙った手数稼ぎ。
真才は赤利を詰ますことは出来ないが赤利も真才を詰ますことは出来ないと考え、いち早く玉を逃がし相入玉なった際の27点法で勝つというプラン。
見事、作戦がハマり真才が勝利しました。
決勝戦は3巻ではこの対戦しか描かれておらず、4巻で来崎夏vsメアリー・シャロンが描かれます。
『王者の盤狂わせ』3巻の感想
準決勝でクローズアップされた葵玲奈と天王寺魁人は、どちらも今まで避けてきた、否定してきたものがあり、お互い追い詰められた場面でそれを乗り越えるという部分が描かれていました。
結果的には葵は凪咲に勝利し、魁人は真才に負けましたが、どちらにとっても意味のある戦いになったと思います。
決勝の渡辺真才vs青薔薇赤利の対戦はこれまでの対戦の中でも最も手に汗握る展開でした。
特に真才がミスで飛車を打ってしまったと勘違いさせられた場面はしびれましたね。
対戦以外でも3巻では、登場キャラの過去、背景を詳細に描いており、それぞれのキャラに愛着を持つことができました。
特に遺伝子操作によって誕生した青薔薇赤利。
才能を持って誕生させてやったのだからという勝手な大人の期待に振り回され、勝つ事だけを目的に将棋を指してきた赤利が真才との対戦の後、涙を流しながら「…赤利の中で、一番っ…いっちばん。いい将棋だった…っ」とい言った場面は不覚にも、もらい泣きしてしまいそうでした。
1巻から3巻まで読んできて、将棋の専門用語を極力使わず、素人にも分かりやすい表現をしているのに、戦い自体は熱く、スポーツの対戦を見ているかのような興奮を感じられます。
心理戦の描き方も非常に上手ですし、将棋、学園、ラブコメと様々な要素がありますが、ヒューマンドラマとして質の高い作品だと思いました。
とにかく面白い!
4巻の発売が待ちきれません。

