2019年10月3日、【世界陸上ドーハ大会】女子5000m/1組目に登場した田中希美選手が15分4秒66のタイムで6位に入り、タイムでの決勝進出を決めた。
ロンドンで開催された前回大会の女子5000mには鈴木亜由子選手、鍋島莉奈選手(ともに日本郵政グループ)が出場したが決勝進出を逃しており日本勢4年ぶりの決勝進出となった。
予選の走りを振り返る
予選1組目は15名。
田中選手の5000mの自己ベストはレース前までは15分15秒80。
1組目出場の他国の選手と比べると持ちタイム的には厳しい戦いになると予想されていた。
田中選手はスタート直後こそ中盤でレースを進めるが直ぐに2番手にポジションを上げる。
最初の1000m通過が3分4秒。このペースは日本のトップ選手が集まる記録会でペースメーカーが刻むペーストほぼ同じ。このペースが続けば田中選手にもチャンスがあるのではないかと思えた。
何故なら、田中選手は国内の大会や駅伝でも積極的なレースをするタイプの選手であるがスローの展開で進み切れ味のある選手にラスト勝負で抜かれるというパターンが多かったからだ。
しかし、このレースの様に日本人選手にとってミドルからハイペースで進めば先頭を引っ張る必要もなく力のない選手は脱落していくし、田中選手も自分の実力をフルに発揮できる。怖いのは極端なペース変化だけ。この海外選手が作り出す極端なペース変化には現時点で日本人選手は誰も対応できない。
2000m通過は6分8秒。最初の1000mと同じ3分4秒。願っても無いレース展開となった。
3000m通過は9分9秒若干、ペースは上がったが田中選手は中段より前目の好位置をキープ。非常に落ち着いた表情で走っていた。
4000m通過は12分5秒。
先頭集団はここで初めてキロ3分を切るペースに切り替えた。余裕のあった田中選手だが前の集団からは少し遅れ6番手。5位以内が順位での決勝進出を決めれるが前を追わないといけないし後ろに抜かれる事も許されない厳しい状況となった。それでも田中選手の走りはシッカリとしており順位での決勝進出の可能性もあると思わせた。
ラスト1000m。流石に世界のトップクラスのギアチェンジに大きく離されるが田中選手自身もペースを上げていく。残り1周で7位まで着順を落とす場面もあったが最後は抜き返し6位でフィニッシュ。
フィニッシュタイムの15分4秒66は自己ベストを10秒以上更新するタイムであり日本歴代3位という素晴らしい記録でもあった。この世界陸上という大舞台で出したタイムだけに非常価値がある。
そして、ラスト3000mを8分台で走破したのは立派の一言。
また、【東京オリンピック】女子5000mの参加標準記録15分10秒00を突破し、早い段階で決めた事で今後のレース選択にも余裕が持てるのではないだろうか?
【世界陸上ドーハ】女子5000m予選1組
日本の二十歳・田中希実が我慢のレースで自己記録をマークし決勝進出!決勝では小さな身体でアフリカ勢に立ち向かう!#TBS #世界陸上 #ドーハ #5000m #田中希実 pic.twitter.com/GcnYYzWH9f— 今夜10時 世界陸上ドーハ TBSテレビ陸上 (@athleteboo) October 2, 2019
決勝に関しては格上選手ばかりなので、申し訳ないが通用しないだろう。しかし、まずは予選を突破した事に価値があり、疲れはあるだろうが決勝でも積極的なレースを展開し何か一つでも得るものがあればいいなと思う。
東京オリンピックに向けて
持ちタイム的には現役の日本人選手で最速となった田中選手。
東京オリンピックの参加標準記録を突破できる可能性がある選手は限られているので、東京オリンピック出場に大きく前進したと言っていいだろう。
但し、前述の通り国内のレースではスローペースの展開でラスト勝負になるパターンが多く、勝ちきれない事が多い。2020年の【日本陸上選手権】で3位以内に入れば代表内定となるが是非とも勝ち切る姿を見てみたい。
今回の予選のようにロングスパートを使えれば十分、勝ち切れる可能性はある。
そして、日本人選手では福士加代子選手ただひとりしか達成していない14分台を田中選手には達成してもらいたいし日本記録更新(14分53秒22)も射程圏内だろう。
田中希美 プロフィール
ここからは田中希美選手の簡単なプロフィールを紹介していこう。
名前 | 田中希美(たなかのぞみ) |
生年月日 | 1999年9月4日 21歳 2020年9月現在 |
血液型 | 不明 |
出身地 | 兵庫県 |
出身校 | 西脇工業高等学校→同志社大学スポーツ健康科学部 |
所属 | 豊田自動織機TC |
身長・体重 | 153cm・41kg |
駅伝の名門、西脇工業に進学し【全国高校女子駅伝】の華の1区を1年次から3年連続で走った。
田中選手のご両親は共に陸上選手であり、父親の健智(かつとし)さんは福岡国際マラソンに出場。母親の千洋(ちひろ)さんは北海道マラソンを2度制している。
そんな陸上のサラブレットでもある田中選手だが、見た目的には母親の千洋さんにソックリだ。田中千洋さん 画像
高校卒業は同志社大学に進学。一般的な選手であれば大学で陸上を続けるか実業団に入社するが、田中選手の場合は大学で勉強し陸上部には入らず兵庫県尼崎市に拠点を置くND28ACで走る事を決めた。
2018年の【U-20世界陸上】女子3000mを制するなど大活躍。高校卒業後も自己ベストを更新し続けている。
積極的な姿は高校時代と変わらず常に世界に目を向けている印象のある選手だ。
現在は豊田自動織機TCに所属。実業団の豊田自動織機とは異なり、田中選手等をサポートする為に豊田自動織機が立ち上げたチームで田中選手の父親、健智さんが指導をしている。
少し変わった環境ではあるが、実業団や大学で駅伝を走るよりトラックを中心に練習をしていきたいという考えを持っているのではないかと思っている。
今年も大会や記録会で非常に安定して高いパフォーマンスを発揮しているので進んだ道は間違いではなかったのだろう。
今後の女子の長距離を引っ張っていく存在であることは間違いないと思っているので大きな怪我がないよう気を付けてもらいたい。
追記:2020年7月8日に行われたホクレン深川大会3000mで8分41秒35の日本新記録を樹立した。
福士加代子選手の持っていた従来の日本記録8分44秒40を3秒05更新。
更には2020年8月23日に行われたセイコーGGPの1500mで4分05秒27の日本史記録を樹立。
小林祐梨子さんが持っていた従来の日本記録を2秒以上更新。
怪我さえなければ5000mで14分台を出すのはまず間違いないだろう。
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