女子W杯Round16なでしこジャパンVSオランダ展望と戦評・決定機を決めきれず1-2で惜しくも敗戦…

サッカー

 

女子サッカーW杯。

決勝トーナメント進出を決めたなでしこJAPANは日本時間6月26日午前4時にベスト8進出を懸け強豪オランダと対戦する。

苦しんだグループステージを終え、ここからはノックアウト方式の決勝トーナメント。内容より勝つ事だけが求められる。

オランダチームの特徴や警戒するべき選手など紹介しながら、なでしこJAPANがどのように戦っていくべきか考察していきたいと思っている。

お時間や興味があれば、お付き合い頂きたい。

 

予想スタメン

 

スタメンを固定しない高倉監督なのでスタメンを予想するのは非常に難しい。

ここは私の希望を込めて予想しよう。

イングランド戦では中島依美選手をボランチに据えたがこれだけ絶対にやめてもらいたい。中島選手は素晴らしい選手ではあるが明らかにサイドアタッカー向き。守備面では甘い所がある。これは代表だけでなく所属チームのINACレオネッサでのプレーを見ても分かる事。

前回はベンチスタートだった三浦成美選手は高倉選手が休ませたかったという意図があったらしい。

なでしこJAPANの中で今大会、一番チームに貢献している選手だろう。運動量も多く、相手のパスコースをシッカリ読み激しくあたっていける。さらにはボールを持っても早いテンポでパスを供給してくれるのでチームに良いリズムを与えてくれる。今回は間違いなくスタメン起用されるだろう。

怪我人が多く、誰が試合に出場できる状態か分からないので何とも言えないがイングランド戦後、5日間で回復している事を祈りたい。

 

 

2トップは岩渕真奈選手菅澤優衣香選手を推す。

横山久美選手はイングランド戦でも悪くはなかったが岩渕選手とのコンビネーションという部分では菅澤選手の方が良い。イングランド戦も菅澤選手と三浦選手が入って流れが変わった。ただし、菅澤選手には決定機でシッカリとした仕事をしてもらいたい。

注目は左サイドハーフ。アルゼンチン戦で負傷した長谷川唯選手だが回復に時間が掛かっており、最年少の遠藤純選手が起用されている。遠藤選手はここまで堂々としたプレーを見せておりアシストも記録し守備面でも貢献している。何も問題ないがスピードのある選手なので切り札としてベンチに置いておくのも悪くない。長谷川選手が回復しているのが条件ではあるが…

長谷川選手がスタメン起用された際は、存分にテクニックを発揮しゴールに繋がるプレーを期待したいが時より見せる軽いプレーだけはしないよう気を付けてもらいたい。守備面でも一発で取りにいこうとせず、しつこく食らい付くディフェンスが大事になってくる。

その他、こちらも怪我で1試合も出場していない籾木結花選手

流れを変えられる選手であり非常に決定力が高い。回復していれば高倉監督も交代のカードを切りやすいだろう。

 

日本VSオランダ展望

 

グループEを全勝で勝ち上がってきたオランダ。

しかし、どの試合も決して楽な展開だった訳ではない。初戦のニュージーランド戦は格下相手に後半アディショナルタイムの1点が決勝点となる薄氷の勝利であった。それでも全ての試合を勝ち切ったというのは凄いところ。

FIFAランクは日本の7位に対しオランダは8位。対戦成績こそ日本が勝ち越してはいるが、昨年2月のアルガルベカップでは2-6というスコアで大敗している。格上のチームとだと思って試合に挑まなければならない。

 

中心は前線の3人。

エースストライカーの9番ミデマー選手

右サイドの7番ファンデサンデン選手

左サイドのマルテンス選手

 

ミデマー選手は世界トップクラスのストライカーだ。テクニック、スピード、パワー、高さ全てを兼ね備え穴の選手。日本のディフェンダーは複数で守る必要がありそうだ。センターバックの二人、熊谷紗希選手と市瀬菜々選手はミスが多く、連携も上手くいっていないのでシッカリと修正して試合に臨めるかがポイント。この二人の出来が悪いからといって代わりになる選手がいないというのが現状だ。

ファンデサンデン選手はスピードに秀でたプレーヤー。アルガルベカップでも日本の左サイドをいいようにやられた。相対する鮫島彩選手はイングランド戦ではブロンズ選手、今回はファンデサンデン選手を相手にするという事で大変だろうが頑張ってもらいたい。

いくらスピードのある鮫島選手とはいえ、ファンデサンデン選手のスピードには絶対に敵わない。

まずは、ファンデサンデン選手にボールが渡らないよう高い位置でボールを奪いたい。ここは個人でなくチームとして連携しながらのディフェンスが必要だ。

裏を取られたくないからといって鮫島選手がズルズル下がるようでは相手の時間帯が増えるだけだ。慎重かつ積極的な守備が求められる。

また、抜けきらなくてもアーリークロスを放り込んでくるケースもあるのでセンターバックを中心に一瞬たりとも気を抜く事はできない。

マルテンス選手も総合力が高く、突破力のあるプレーヤーだ。

高さもあり、なかなか厄介な相手。

清水梨紗選手がマークする可能性が高いと思うが、持ち前のスタミナでしつこいディフェンスが必要。右サイドハーフで起用されるであろう中島選手も加わり複数で守り切りたい。

とにかく、オランダの前線3人は超強力。前半は絶対に無失点で切り抜けたいので、試合開始直後から連携して相手にプレッシャーをかけたい。前半を無失点に抑えられれば日本に必ず勝機が生まれるだろう。

 

オランダの穴

 

近年の欧州勢は身体能力の高さに組織力も備わってきている。その中で欧州チャンピオンになったオランダは本当に強い。

しかし、オランダはイングランドやフランスに比べれば組織力ではまだ劣る。

特にバックラインの統率には穴があるので日本はバックラインの裏を突く攻撃を多用したいところ。

だが、むやみにロングボールを使うのではなく長短のパスを繋ぎながら相手に的を絞らせないようにしたい。

オランダはカメルーン戦やカナダ戦でもバックラインの裏を突かれ失点したりピンチの場面を迎えていたので必ずや得点機が訪れるだろう。裏のスペースを使う事ができれば統率できていないバックラインがズルズル下がり日本のペースに持ち込めるはずだ。

そして、センターバックがドリブルに対応できない場面も幾つかあった。パスだけでなくペナルティーエリア付近で積極的にドリブルを仕掛けたい。

更に、今大会ではVARが採用され、ちょっとした接触でもPKになる事が多い。正直、「今のがPK?」と思う場面も多く納得できない部分もあるがルールなのでシッカリと利用したい。ゴール前では積極的なプレーが必要であるし岩渕選手はペナルティーエリア内でドリブルを仕掛けても面白い。

負けたら終わりの決勝トーナメント。悔いのない試合をしてもらいたい。苦しい展開になる可能性もあるが、どんな展開になっても諦めない事。それがなでしこJAPANの一番の良さだと思うので、魂の籠ったプレーを期待したい。

スタメン発表

 

背番号 ポジション 選手名 OUT IN
18 GK 山下杏也加
3 DF 鮫島彩
4 DF 熊谷紗希
5 DF 市瀬菜々
22 DF 清水梨紗
6 MF 杉田妃和
7 MF 中島依美 後半27分 後半27分 籾木結花
14 MF 長谷川唯
17 MF 三浦成美
8 FW 岩渕真奈 後半46分 後半46分 宝田沙織
9 FW 菅澤優衣香

 

予想スタメンと同じになった。現状のベストメンバーと言っていいだろう。

 

前半の戦評

 

試合開始直後からオランダが激しいプレスをかけてくるが、日本は落ち着いた対応を見せる。

しかし、前半の7分過ぎからオランダの圧力に押し込まれ、ペースを握られてしまう。試合前に雨が降った事や水を撒いた事が影響したのか肝心な場面で足を滑らせる選手が多かった。

オランダはスピードのある前線の選手にロングボールを供給しサイドから攻め始める。

そして前半17分、左サイドのCKを得たオランダはスピッツェ選手のグラウンダー気味の速いCKをニアサイドに走り込んだマルテンス選手が右足アウトサイドに当てるとゴール前の菅澤選手の股の間をすり抜け、そのままゴール。前半は絶対に無失点で守りたかった日本だったが先制点を与えてしまう。

気落ちするかと思われたが、失点後も選手同士が声を掛け合い絶対に勝つという意思が感じられた。

すると、前半20分左サイドでボールを持った岩渕選手が右サイドから中央へ走り込んできた長谷川選手にパスを供給。そのパスを長谷川選手がはたき菅澤選手がトラップしてペナルティーエリア内へ。足を滑らせ倒れ込みながらも右足でシュートを放つが右のポストにはじかれ決定的なチャンスをものにする事ができない。失点直後であっただけに是か非でも決めたいシュートだった。

その後はオランダがロングボールを使い攻め込んでくるがディフェンス陣が落ち着いて対処。両サイドのマルテンス選手やファンデサンデン選手のスピードを活かす攻撃をさせなかった。

しかし、日本はマイボールになってもミスからボールを失う場面が多く、なかなか攻撃のリズムが作れない。中島選手は今大会を通して精彩が無いが、この日もパスミスやドリブルでボールを失うなど場面が多く、ディフェンス面でも何度も足を滑らしフラフラした印象を受けた。

膠着した時間が続くが日本も徐々にリズムを掴み前半43分、杉田選手が左サイドから中央に切れ込みペナルティーエリア内の菅澤選手にパスを送る。菅澤選手はワンタッチで岩渕選手に落とし、岩渕選手が得意のターンで相手ディフェンダーを交わしゴール前の狭いスペースへスルーパス。このスルーパスに反応していた長谷川選手がゴール右上に蹴り込み日本は同点に追いついた。

非常に素晴らしい連携で日本らしい美しい攻撃だった。

前半終了間際に追いついたというのも精神的に大きかっただろう。

1-1で前半は終了した。

 

後半の戦評

 

後半のスタートは両チームとも交代は無しでキックオフ。

明らかに動きの悪い中島選手の交代があると思っていたので意外ではあった。

後半の日本はオランダの攻撃に完全に対応しオランダはパスの出し所に困る場面が増えてくる。

ロングパスで裏を狙ってくるがGKの山下選手が高いポジションを取り、危ない場面を作らせない。この辺りのディフェンダーと山下選手の連携は見事だったと思う。

後半10分を過ぎた辺りからオランダは足も止まり完全にロングフィード一辺倒の攻撃に。

日本の守備陣形は崩される事無く集中していた。

ここからは日本がボールを持つ時間帯が増え、ゴール前に攻め込む場面も増えてくるが守備に意識がいっている為か攻撃に人数をかけられない。

しかしながら、良いリズムである事は間違いなく得点の匂いを感じた。

まるでボールを動かせなくなったオランダは堪らず選手交代。スピードとドリブル突破が魅力のベーレンスタイン選手を投入。

それでも流れは変わらず、ここからは日本の波状攻撃が続く。

後半26分、ペナルティエリア左の深い位置から岩渕選手が相手を引きつけヒールパス。走り込んだ長谷川選手が右足でシュートを放つもポストの右に外してしまう。

その直後、日本はこの試合1人目の選手交代を行う。精彩を欠く中島選手に代えて籾木選手を投入。ここで初めて籾木選手の怪我が回復していた事が分かった。

この交代で更に日本は勢いづく。

右サイドでボールを持った籾木選手がゴール前の菅澤選手へ正確なロングフィード。惜しくもオフサイドとなったがピッチを広く使い、足の止まったオランダ選手を慌てさせた。

その1分後、再び籾木選手がビックチャンスを作る。右サイドで相手のパスをカットした清水選手が籾木選手にパス。トラップで前を向いた籾木選手がゴール前に走り込んだ岩渕選手に浮き球のスルーパス。パスを受けた岩渕選手はドリブルでゴールに向かいゴール右側からシュートを狙うがサイドネットに阻まれてしまう。

日本の攻撃はまだまだ続く。後半34分、右サイドでボールを拾った杉田選手が中央の岩渕選手へパス。そのまま右サイドを駆け上がる杉田選手に岩渕選手がスルーパスを送る。ボールを受けた杉田選手はペナルティーエリア内に侵入しディフェンダーを交わし得意の左足に持ち替えて強烈なシュートを放つがクロスバーにはじかれてしまう。

その1分後、ペナルティーエリア左でボールを持った長谷川選手がファーサイドにふわりとしたクロスを入れ、菅澤選手が頭で折り返す。相手ディフェンダーに当たってしまうがこぼれ球を籾木選手が拾い、相手のスライディングを外しワンテンポ送らせてシュート。しかし、相手GKにはじかれてしまう。

決定機を外し続けた日本に勝利の女神は微笑まなかった。

後半43分、ペナルティーエリア内でミデマー選手がシュート。このシュートが熊谷選手の左腕に当たりPKの判定。VARでも判定変わらずPKを献上。

このPKをマルテンス選手がゴール右隅に流し込みオランダが勝ち越し。

アディショナルタイムはオランダが時間を上手く使い日本は敗れた。

 

勝てた試合だった思うが結果が全て。相手より1点でも多くゴールを決めたほうが強いという事だ。

世間ではどう思われているか分からないが、なでしこJAPANのペナルティーエリア内での決定力は世界屈指。(データに表れている)

チャンスの数は少ないが高確率で決めるのがなでしこJAPANの特徴であった。

しかし、この試合はチャンスは多かったのに決めきれなかった。敗因はそこに尽きる。

そして、中島選手の交代のタイミングが遅すぎた。籾木選手が後半の頭、もしくは、もう少し長くプレーできていれば結果は変わったかもしれない。

しかし、このW杯の4試合の中で一番、良いゲームをしたと思う。

女子のサッカー選手は今後の女子サッカーの為にという想いを持ってプレーしている選手が多い。勝って欲しかったというより勝たせてあげたかった。

試合後のインタビューで涙を見せている選手が多く、見ている方も非常に辛かった。

 

選手・監督のコメント

 

高倉麻子監督

決定機を活かせなかったのは残念。結果を受けいれなければいけない。選手達には申し訳ないしフラストレーションもある。

熊谷紗希選手

前の選手があれだけ追ってくれたのに2失点して責任を感じる。若い選手達と強くなって、この舞台に戻ってきたい。

籾木結花選手

私達がなでしこの歴史を終わらせてはいけない。優勝できるようなチームになって帰ってきたい。

岩渕真奈選手

チャンスも多く、得点の場面も良かったけど結果は結果。悔しい。

負けは悔しかったが試合後のインタビューを見て若い選手に頼もしさを感じた。凄く悔しそうな表情で涙を流していたが、なでしこJAPANは強くなくてはならないという事を理解している発言が印象的だった。若いながらも日本の女子サッカーの為に貢献したいという気持ちの表れではないだろうか?

 

最後に…

 

W杯フランス大会をベスト16で終えたなでしこJAPAN。

決して褒められる成績ではないかもしれない。

しかし、試合を重ねる毎にチームは強くなっていった。

高倉体制になってからは世代交代を進めないといけないという事もあり、W杯直前までメンバーを固定する事ができなかった。色々な選手を試したい気持ちが強かったのだろうが、その期間があまりにも長すぎたように思える。

もう少し早めにある程度、固定メンバーが決まり、勝つ事だけを考えて親善試合や国際大会に出場していたら、チームの完成度はもっと高かったように思う。個人的な意見ではあるが負けて得られる事より勝って得られる事の方が大きいと思っている。W杯は終わったが来年は東京オリンピック。もう選手を試している時間はない。今大会で活躍した選手をベースに勝ちに拘って試合をこなしていかないと今回と同じような結果になるだろう。

今のなでしこJAPANは若く勢いのある選手も多いので勝って自信を付けて東京オリンピックに臨んでもらいたい。

シッカリした考えを持っている選手が多いので、きっと大きく成長してくれるだろう。

見限った人もいるかもしれないが私は期待している。強くなって帰ってきて欲しい!!

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