ここまでグループステージ2戦を終え、女子日本代表(通称なでしこJAPAN)は1勝1分の勝ち点4で2戦全勝のイングランドに次ぐグループ2位に付けている。
また、各グループリーグの3位チームのうち上位4チームが決勝トーナメントに進出する事ができるが、仮にイングランド戦に負けても上位4チームに入る事ができ、3大会連続の決勝トーナメント進出が決まった。
まずは一安心といったところだろうか。
日本時間の6月20日早朝に行われるイングランド戦は決勝トーナメント初戦の相手が決まる重要な一戦だ。
決勝トーナメント初戦の相手
日本はイングランドに勝てば文句なくグループDの1位通過が決まる。
1位通過すると決勝トーナメントの初戦はグループB・E・Fの3位チームとの対戦となる。当然、各グループを1位通過したチームよりは戦い易く勝ち進む事を考えれば勝って1位通過するのが望ましい。
イングランド戦に引き分けた場合は2位での決勝トーナメント進出となりグループEの1位と戦う事に。Eグループの1位はオランダかカナダのどちらかのチームになるが両チームともパワーがあり、特に近年、力を付けてきているオランダはスピードのある選手が多いだけに、なるべく避けたい相手だ。
そして日本がイングランドに負けた場合は、アルゼンチンの勝敗によって順位が変わってくる。
アルゼンチンが勝てば日本は3位通過。引き分け或いは負けであれば2位通過となる。
3位通過という最悪の結果になれば決勝トーナメントの初戦はフランスかドイツが相手。
特にフランスと対戦する事が決まれば、そこでTHE ENDと言っても過言ではないくらい強い相手だ。地元開催という事もあるが、全ての面でレベルが高く、直近の親善試合でも日本はフランスに1-3で敗れている。
イングランド戦の勝敗 | 通過順位 | 決勝トーナメントの初戦の対戦相手 |
日本 勝利 | 1位通過 | チリorタイorカメルーンorニュージーランドor中国 |
日本 引き分け | 2位通過 | オランダorカナダ |
日本 負け | 2or3位通過 | 3位通過の場合はフランスorドイツ |
イングランド戦の予想スタメン
高倉監督は「ベストの布陣で勝ちに行く。コンディションの良い選手を起用する」と語っていた。
これを踏まえて予想するとスコットランド戦のスタメンをそのまま起用する可能性もありそうだ。
これがスコットランド戦のスタメン。コンディションの良い選手を起用するとなると長谷川唯選手はベンチスタートになると思うが、スーパーサブ的存在での起用が多くなると予想されていた遠藤純選手が19歳になったばかりとは思えない落ち着いたプレーを披露。代表に初召集されてから短い時間で常に結果を残しているし、伸びしろも計り知れないので個人的には遠藤選手をこのままスタメンで起用してもらいたい。
2トップは結果を残した菅澤優衣香選手と岩渕真奈選手を動かす必要はないだろう。しかし、岩渕選手は怪我明けという事もあり、しっかりと足の状態を見て起用を決めて欲しい。
小林里歌子選手や籾木結花選手も故障を抱えていたが状態を上げているようなので起用される可能性もある。小林選手はスコットランド戦で途中出場し良い動きを見せていたので問題なさそう。ストライカーでもありパスセンスも抜群な彼女の復活は日本にとって非常に大きい。
スコットランド戦でセンターバックを南萌華選手から市瀬菜々選手に変更したが、試合終盤で市瀬選手が相手にパスを渡してしまい失点してしまった。
しかし、失点した場面以外は素晴らしい動きをしていたので市瀬選手をそのまま起用するのも悪くない。
日本VSイングランド展望
イングランドは日本より間違いなく格上のチーム。
FIFAランク3位で今大会の優勝候補の一角。
過去の対戦成績も1勝3敗2分と苦しんでいる上に、直近の試合では0-3で完敗している。
苦しい試合展開が予想されるが、スコットランド戦で見せたように試合開始直後から激しいプレッシャーをかけるというのが勝つ為には必須の条件だ。相手ペースで試合が進むと猛烈な圧力で攻撃してくるので守り切るのは容易ではない。
日本の守備陣が苦手とするサイド攻撃を得意としており、スピードのある選手が揃っている。
特に右サイドバックのブロンズ選手は警戒が必要。3月のシービリーブスカップでも日本はブロンズ選手にいいようにやられた。スピードがあり積極的に攻撃参加してくる。対応する鮫島彩選手もかなり苦労していたので対策は立てているだろうがひとりだけの力では抑えきれないだろう。
日本が主導権を握り両サイドバックが高いポジションでプレーするのが理想ではあるが、そういう時間帯は少なくなる。
まずはブロンズ選手にボールが渡る前にパスの出所を潰してしまうか、渡ってしまってもスピードに乗らせないような守備が必要になってくる。
そして、ブロンズ選手からボールを奪えれば逆に日本のチャンスになる事を忘れてはいけない。ブロンズ選手が上がった後は左サイドに大きなスペースができるので奪った後は速い攻撃が必要だ。この時に気持ちの重心が後ろにあると速い攻撃はできないので常に攻める気持ちを持っていて欲しい。
幸いなことにキャプテンの熊谷紗季選手が「立ち上がりから積極的に行きます!」と宣言してくれているのでチーム内で同じ気持ちを共有できていそうなのは心強い。
3月のシービリーブスカップでは前半立て続けに失点したが後半は日本のペースになる時間も多かった。決してチャンスが無い訳ではない。
相手サイドバックの裏のスペースを使う事で今度は中央にもスペースができるはず。単調な攻撃ばかりせずドリブル、長短のパス、ワンタッチプレーなど場面によって使い分ける事が重要だ。ペナルティーエリア内に侵入できればファールやハンドなども起こりえるし相手のセンターバックは細かいタッチのドリブルに対応するのが苦手な感じがあるので積極的な仕掛けも必要だ。
そして、バックラインでのパス回しでミスをしないことが凄く重要になってくる。プレッシャーの厳しい場面ではイージーなプレー選択も必要だ。強い相手なだけにミスから失点することだけは避けたい。
日本のスタメン
背番号 | ポジション | 選手名 | OUT | IN |
18 | GK | 山下杏也加 | ||
3 | DF | 鮫島彩 | ||
4 | DF | 熊谷紗希 | ||
5 | DF | 市瀬菜々 | ||
22 | DF | 清水梨紗 | ||
6 | MF | 杉田妃和 | ||
7 | MF | 中島依美 | ||
11 | MF | 小林里歌子 | 後半17分 | 後半17分三浦成美 |
19 | MF | 遠藤純 | 後半40分 | 後半40宝田沙織 |
8 | FW | 岩渕真奈 | ||
20 | FW | 横山久美 | 後半16分 | 後半16分菅澤優衣香 |
それにしても意外なスタメンだった。
フォーメーションこそ4-4-2のままだったがスコットランド戦で結果を残した菅澤選手に変えFWに横山久美選手を起用。
さらには中島選手を今大会、初のボランチに配し右サイドハーフには小林選手。ここまで素晴らしい働きをしていた三浦選手をスタメンから外した。
どのような意図があったか分からないが、大柄なディフェンダーが揃うイングランド相手にポストプレーが得意な菅澤選手よりもドリブルを仕掛けれる横山選手を選択したのかもしれない。
前半の戦評
日本はスコットランド戦と同じく試合開始直後から積極性はあったがDFラインにプレッシャーをかけるというよりは意図を持って相手ボランチにパスを入れさせないような守備をしていた。
ここのパスを簡単に通させない事でスピードのある両サイドバックへの大きな展開を防ぎたいという狙いだったように思う。
イングランドのDFもパスの出し所に困るなど日本の立ち上がりは決して悪くなかった。
すると前半9分。横山選手がファールを貰い、フリーキックを獲得。ゴール正面のかなり遠い位置ではあったが横山選手は直接ゴールを狙う。右足から放たれた強烈なシュートはゴール左上の素晴らしいコースに飛んだがこれを相手GKのバーズリー選手がファインセーブ。惜しくも先制点とはならなかった。
その後も日本の時間帯が続くが前半14分、DFラインのパス回しから熊谷選手が岩渕選手目掛けてフィードするもこれがパスミスとなり相手にボールが渡ってしまう。
スタンウェイ選手が華麗なターンで杉田選手を交わしスルーパス。これをホワイト選手がしぶとくねじ込みイングランドが先制した。
ここまで良い流れで試合を進めていただけに非常にもったいない失点だった。危惧していたDFラインからのパスミスが失点に繋がり個人的には防げる失点だったと思う。
その後もイングランドは猛攻を仕掛けるがGKの山下杏也加選手が再三の好セーブで日本を救った。
日本も何度かチャンスを掴むが選手の距離感が遠くパスが上手く回らないまま前半は終了した。
前半、失点してしまったのは痛かったが3月のシービリーブスカップで得た教訓を上手く活かしたサッカーを出来ていたように思う。リードを許して前半を終えたが決して悲観するものではないと感じた。
後半の戦評
メンバー交代無しで後半のキックオフ。
後半の立ち上がりもイングランドがペースを掴み日本のゴール前に迫って来るが日本もブロック作りシッカリと対応。
日本も敵陣で岩渕選手にパスを通すもどうしても周りとの連携が上手くいかず決定的な場面は作れない。
すると後半14分、日本が一番警戒していたであろう右サイドバックのブロンズ選手が浮き球をのパスを受けペナルティーエリア右側の深い位置からクロスを入れる。このクロスにゴール前で待ち構えていたダガン選手が右足でボレーシュート。シュートは枠を捉えていたが、またしても山下選手のファインセーブで日本のピンチを救った。
その数分後、日本はメンバー交代を行う。横山選手に代わり菅澤選手。小林選手に代え三浦選手が投入された。
この交代が見事に嵌り、徐々に日本がペースを握る。
三浦選手がボランチに入った事で危険な場面を未然に防ぐ事が多くなった。三浦選手のディフェンス能力と運動量は本当に素晴らしい。また、菅澤選手と岩渕選手の連携が良く、ここまであまり見られなかったスムーズなパスが敵陣で繋がるようになった。
怒涛の攻撃を見せる日本は後半31分にチャンスを迎える。岩渕選手が相手のDFとDFの間でボールを受けるとそのままドリブルで持ち込みゴール前の菅澤選手のスルーパス。しかし、ここで菅澤選手が痛恨のトラップミスをしてしまいゴールならず。
後半33分には右サイドの清水選手がペナルティーエリア中央へアーリークロスを入れ菅澤選手に。相手DFを背負いながら右足を振り抜くもシュートは枠上に外れてしまった。
さらに後半38分には左サイドから鮫島選手がクロスを放り込み菅澤選手が右足つま先で合わせるも決めきれず。
その直後、イングランドはスピードが持ち味のパリス選手を投入。一気に攻撃のスイッチが入ったのかスルーパスから抜け出したホワイト選手が冷静にゴール左隅に流し込み試合を決める2点目を奪われた。
日本は最後まで諦めず攻撃するも1点が遠く、0-2で敗れ1位で決勝トーナメントに進出する事はできなかった。
試合内容自体は決して悪くなかったと思うが決めきれなかったというのが最大の敗因になるだろう。もうひとつは、何度も書いているがDFのパスミスが非常に多く改善されていない事。この試合の1失点目も熊谷選手のパスミスが失点に繋がってしまった。失点の場面だけでなく危なっかしい場面が何度もあったのでDFの選手は冷静に状況を判断してプレーを選択して欲しい。
DFラインのパス回しから相手を崩していくのが日本のスタイルでもあるが一番、失点に繋がっているという事を忘れてはいけない。簡単なプレーを選択する事も必要だ。
この試合でスタメン起用された横山選手の動きは決して悪くなかったが岩渕選手とのコンビネーションを考えると菅澤選手のほうが合っている。決勝トーナメント初戦は是非、岩渕選手、菅澤選手の2トップをスタメン起用してもらいた。
期待していた遠藤選手はDF面では頑張っていたが攻撃面では消極的で物足りなかった。また、ボランチやDFがボールを持った時の動き出しが少ないので、ここは反省するべき点だろう。トータルで見れば本当に頑張っていると思うが求めるものが高いので次にチャンスがあれば得点に絡む活躍をして欲しい。
あとは三浦選手。地味ながら今大会で一番活躍している選手だと個人的には思っている。正直、スタメン起用しなかった意味が全く理解できないが、次の試合はスタメン起用される事を強く願っている。
決勝トーナメント初戦の相手は?
Dグループの日程を全て終了し日本は勝ち点4でグループ2位での決勝トーナメント進出が決まった。
1位通過できなかったが悲観する事はない。次の試合があるという事が非常に大事なので切り換えて決勝トーナメント初戦を迎えてもらえればと思う。
気になる対戦相手だがEグループの1位、オランダorカナダとの対戦が決まっている。
どちらも強いチームだが勝てない相手ではない。
正直、W杯までの国際大会や親善試合を見ていると今回の日本は物足りないなと思っていたが、徐々にではあるが良くなってきていると思う。今回のイングランド戦も3月のシービリーブスカップの時に比べれば遥かに内容が良かった。
若い選手が多いので大会期間中にチームが成長する可能性も大いにある。
怪我人が多いのが難点だが、決勝トーナメント初戦は6月26日なので時間も十分にあるし回復する選手もいるかもしれない。
イングランド戦に負けて落ち込む気持ちもあるだろうが反省するところは反省しつつも切り換えて前向きに頑張ってもらえたらなと思う。
岩渕選手も試合後のコメントで反省点を口にしながらも「間違いなく前向きな材料だと思います!!」と口にしていたので次の試合が楽しみになった。今回は決定力が足りなかったが日本の弱点はDF陣。連携を深めたり、無駄なパスミスを減らして最少失点で守り切ってくれることを願っている。
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