今回PICKUPするのは陸上女子短距離の土井杏南選手。
中学~高校時代は天才と騒がれていたが、大学に進学して以降は思うような結果を残せず、世間から忘れ去られネットでは「土井は終わった」、「引退」などの言葉が並ぶように…
長い期間、トップレベルでの活躍を見せる事はできなかったが今年に入り復活の兆しを見せている。
そんな土井選手の経歴を中心に紹介していくので、お付き合い頂ければ幸いだ。
土井杏南 プロフィール
名前 | 土井杏南(どいあんな) |
生年月日 | 1995年8月24日 23歳 2019年6月現在 |
血液型 | O型 |
出身地 | 埼玉県朝霞市 |
出身校 | 埼玉栄高等学校→大東文化大学 |
所属 | 日本航空(JAL) |
身長・体重 | 158cm・50kg |
土井杏南選手の小学生時代は意外にも空手を習っていたとのこと。
一見すると陸上とは全く関係ない競技に感じるが、空手をやっていた事で体幹が鍛えられ陸上でも安定したフォームで走れるようになったそうだ。
陸上を小学校5年の時に始めるとメキメキと力を付け、中学2年次に出場した【第36回全日本中学校陸上競技選手権大会】女子100mで11秒89の好タイムをマークし優勝。
また、同大会の女子4×100mでは朝霞第一中学校のアンカーを務め優勝に貢献した。ちなみに朝霞第一中学校がマークした47秒30というタイムは中学新記録であった。
翌年も【第37回全日本中学校陸上競技選手権大会】女子100mに出場し中学新記録となる11秒61のタイムで連覇を達成。前年と同じく、女子4×100mでは朝霞第一中学校のアンカーを務め、こちらも連覇を達成した。
高校はスポーツの名門校である【埼玉栄高等学校】に進学。あらゆる高校スポーツの全国大会で活躍しているので一度は聞いた事のある校名ではないだろうか?
埼玉栄高校に進学した土井選手は1年生の時から大活躍を見せることになる。
まずは【第64回全国高等学校総合体育大会陸上競技大会】女子100mに出場し11秒88のタイムで優勝。
次に【日本ジュニア・ユース陸上競技選手権大会】女子ユース100mに出場すると、こちらも11秒93のタイムで優勝。
高校3冠の懸かった【第66回国民体育大会】では陸上少年女子B100mに出場し11秒68で優勝。高校1年生で見事、3冠を達成した。
この頃から、陸上関係者やマスメディアに「天才」と呼ばれるようになり一躍、有名人となった。
2年生になっても勢いは留まらず4月の【織田記念】グランプリ種目の女子100mに出場し予選で11秒53、A決勝で11秒50をマークし立て続けに高校日本新記録を更新。
続く5月の【ゴールデングランプリ川崎】では国内外の強豪選手と走り11秒67で6位。
一週間後の【埼玉県高校総合体育大会陸上競技大会】女子100m準決勝では11秒43のタイムをマークし自らの高校新記録を更新した。この11秒43という記録は現在も土井選手の自己ベストタイムである。
ロンドンオリンピック出場
伸び盛りで絶好調の土井選手は同年6月にロンドンオリンピックの代表選考会を兼ねた【第96回日本陸上競技選手権大会】に出場。
自らの持つ高校新記録に迫る11秒47のタイムで予選を全体1位で通過。
決勝で福島千里選手に敗れはしたものの11秒51のタイムで2位。
日本人女子の100mは福島千里選手、一強という時代だったが高校2年生ながら福島選手と好勝負を演じた土井選手への期待はさらに高まっていった。
ロンドンオリンピックの女子4×100mリレーに出場する事が決まった日本は土井選手を代表メンバーに選出。
ロンドンオリンピック本番では第一走者を務め、日本陸上界で戦後最年少オリンピック出場選手となった
高校3年次は【第66回全国高等学校総合体育大会陸上競技大会】や【第68回国民体育大会】で優勝するも、怪我の影響もあり、2年次のような活躍は見せられなかった。
しかし、テレビ朝日で当時、人気番組であった『怒り新党』の新・3大○○調査会で、土井選手のぶっちぎりレースが取り上げられるなど依然として注目度は高いままであった。
大学進学・不振
高校卒業後は大東文化大学に進学。
春先は200mで自己記録を更新し世界ジュニア選手権の代表に選出されるなど順調だったが8月に左足ハムストリングの肉離れを起こしてしまう。
全治2ヵ月の怪我であったが実戦復帰までには時間を要し、復帰は翌年4月の埼玉県春季記録会となった。
この記録会で全体1位の11秒63で走り復帰戦とは思えない走りを披露。土井選手自身も手応えを感じたようで笑顔がとても印象的だった。
続く、【織田記念】では女子A決勝で日本人1位となり完全復活をアピール。
しかし、その後は国内の主要大会に出場しそれなりの順位で走るも自己ベストタイムには遠く及ばず、12秒台で走る事もあった。
日本陸上選手権でも姿を見る事が無くなり、ネットでは「土井 現在」、「土井 引退」、「終わった」などのネガティブなワードで検索されるようになり、いつしか過去の人のような扱いになってしまった。
不調だったのか他に何か問題があったのかは分からないが、良い時の土井選手を見ていただけに個人的にも残念な気持ちが強かったのを思い出す。
復活の兆し!?
大学では目立った成績をあまり残せなかったが卒業後は、【日本航空】に入社。
社会人初戦となる記録会に出場した土井選手は強い向かい風の中ではあったが12秒台中盤のタイムしか出せなかった。
これだけ長いスランプを見せつけられるとネガティブな声が聞こえてくるのも仕方ないかもしれない。しかし、本人が一番辛かったのは間違いないだろう。
第一人者である福島千里選手も衰えを隠せず、日本の女子短距離界は男子に比べパッとしない時代が続いている。土井選手が絶好調の頃の走りをできるのならば日本陸上選手権で勝つのも簡単な事だろう。しかし、なかなか不調から脱出できない。「もう、本当に終わってしまったのか?」
このように思った陸上ファンも少なくないだろう。
だが、土井選手は諦めていなかった!!
社会人2年目を迎えた2019年4月、【第73回出雲陸上】。土井選手の姿はそこにあった。
女子YOSHIOKAスプリントに出場した土井選手は日本人1位となる11秒68をマーク。例年、条件の良い出雲陸上だが不調時の走りから抜け出した印象を受けた。
昨年の日本陸上選手権女子100mを制した世古和選手に勝ったというのも価値がある。
インタビューで前向きな発言が聞かれ、私を含めた外野より本人のほうがポジティブに考えているのも非常に印象的であった。
【#出雲陸上】
🙋♀️インタビュー
YOSHIOKAスプリント女子100m
日本人1位 #土井杏南(JAL)11秒68(+0.8)
▼大会ページ▼https://t.co/SRMrYYkmvw#JAAF #陸上 pic.twitter.com/L0Jlg37Wpi— JAAF(日本陸上競技連盟) (@jaaf_official) 2019年4月21日
同じく4月に行われた【織田記念】女子100mにも出場。
予選3組目に登場した土井選手は11秒66で全体1位のタイムで決勝に進出。
決勝では11秒64のタイムで表彰台に。勢いのある恵庭北高校の御家瀬緑選手には敗れはしたが11秒6台を安定して出しているように確実に復調気配が伺える。
5月には【世界リレー横浜】の女子4×100mに出場。予選敗退となったが土井選手からは日本の女子短距離をを強くしていきたいという意気込みが感じられた。
【#世界リレー🇯🇵横浜】
🙌🙌チームJAPAN🙌🙌#土井杏南 です🙋♀️
スタジアムでお待ちしています👍✨#チケット 絶賛発売中🎟https://t.co/4ht1WFmbU2#JAAF #陸上 #FasterAsOne pic.twitter.com/G0Ff3ta7MI— JAAF(日本陸上競技連盟) (@jaaf_official) 2019年5月10日
4年ぶり…
復調気配が感じられる土井選手は6月の【布勢スプリント】にも出場。
女子グランプリ100m予選2組目に登場した土井選手は追い風1.9mという絶好の条件の中11秒52でこの組の1位に。ちなみに11秒5台を記録したのは4年ぶりだった。
決勝2組目は追い風2.2mではあったが11秒55のタイムで優勝。タイムもだが勝負に勝ったという事も自信になったのではないだろうか?
レース後のコメントでも「陸上をやっている以上、トップは譲りたくない。」と力強い言葉が飛び出した。
どうやら現在は母校の埼玉栄高校で高校生に混じり練習しているようだ。土井選手にとって一番良かった時期であろう高校時代と同じ環境で練習できているのが良い方向に進むキッカケになったのかもしれない。
11秒2台を目指している土井選手に完全復活という言葉は失礼かもしれないが、そのタイムを目指すスタートラインにようやく立てたような気がする。
2019日本陸上選手権女子100m展望と放送予定
土井選手は2019年6月27~6月30日に開催される、【日本陸上選手権】の女子100mにエントリーしている。
土井選手は意外にも日本陸上選手権では過去に一度も頂点に立っていない。というより殆ど参加出来ていない。
しかし、今回は優勝する大きなチャンスだ。
実績のある選手も多いが、今季は全体的に調子の良い選手が少ない。
実績No,1の福島千里選手は怪我からの回復に時間が掛かっており今季は殆どレースに出場していない。ぶっつけでの日本陸上選手権となるので万全ではなさそうだ。
その他、一昨年の覇者、市川華菜選手と昨年の覇者、世古和選手も今期は低調だ。
このような実績のある選手が順調でないとなると、勢いのある高校3年生、御家瀬緑選手が頂点に立つ可能性も十分あるだろう。
そして、土井選手にも十分チャンスがある。今季のベストタイムが11秒52。コンディションにもよるが、このくらいのタイムで走れれば表彰台に上がれる可能性が高い。
ちなみに昨年、優勝した世古和選手のタイムが11秒64。決勝ではこれより速いタイムを出したいところだ。
タイムテーブル・放送予定
6月27日(木)
14:35~女子100m予選
19:20~女子100m準決勝
18:00~19:50(NHK BS1 NHK BS8K)
6月28日(金)
20:15~女子100m決勝
18:30~19:30(NHK BS1)
19:00~20:45(BS8K)
19:30~20:42(NHK総合)
長い不調期間を抜け復活の兆しを見せ始めた土井杏南選手。中学生の時から活躍しているのでベテランのように感じるが、まだ23歳。
これからの成長次第では東京オリンピックやその次のパリ・オリンピックも目指せるだろう。
日本女子の100mは世界との差があり世界大会の派遣標準記録を突破するレベルにないが、ライバル達と切磋琢磨しレベルを上げていって欲しい。その中心に土井杏南選手がいる事を願っている。
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